留学生新聞ニュース
2012.3.12
■関西地区の留学生募集 好調に推移
〜大震災による「西進」現象に加え 各大学のタイムリーな施策が奉功〜
2012年度の留学生入試が大詰めを迎える中、関西地区の大学の好調ぶりが際立っている。『留学生新聞』が独自の情報網から行った聞き取り調査によれば、同地区の外国人入試の受験者数は、主要校で軒並み対前年比プラスか、ほぼ前年並みの数を確保していることが分かった。東日本大震災の影響による留学生の西への移動や、それを見据えた各大学の東日本エリアへの攻勢、入試上の様々な工夫などが複合的なプラス要因として作用しているものとみられる。
特に留学生から人気の高い同志社大学では、外国人留学生入試の出願者が今年度、大幅に増えた。同校では昨年度まで3万5千円だった留学生の入学検定料を12年度入試より大幅に引き下げ。入試システム自体を多様化させ、出願書類だけで合否判定するパターンと、出願書類と独自試験により総合判定するパターンに区分した上で、前者の受験料を1万円、後者を1万5千円に設定した。同校関係者によれば、こうした入試制度改革により、事前に日本留学試験を受験していれば京都まで来校しなくとも出願書類だけで受験が可能となったことも留学生の受験意欲を刺激したようだ。
東北や九州、関東などエリア外の日本語学校から関西地区の大学を選ぶ留学生も、今年は例年になく目立った。大阪国際大学や京都外国語大学などでは過去に出願実績の少なかったエリアからの出願者が見られ、同志社大学以外の総合大学でも、首都圏から留学生が大挙応募したところが複数みられた。京都地区の大学関係者によれば「留学生の両親が地震や原発の状況を憂慮し、関西や九州など西日本の大学に進学するよう説得しているケースが多いようだ」。
こうした状況を見越して、被災地にある日本語学校へ積極的に打って出る大学も出ている。京都地区のある女子大学では東北地区の応募希望者からの問い合わせをきっかけに、仙台市内にある複数の日本語学校を担当者が直接訪問し、大学側の受け入れ態勢を説明。結果的に数名の入学者を獲得することに成功したという。
海外から直接、留学生を募集し日本語教育を行う大学でも、状況は軌を一にする。今年4月から新たに留学生別科を立ち上げる関西大学では、初年度に計画していた入学者数をほぼ確保した。中国を始めとして台湾からの入学者も予想を上回っているという。同校では大阪・南千里地区に別科生が入居できる無線LAN完備の留学生寮を完成させており、収容可能な室数は約160室と、10月入学生も想定した態勢をすでに整えている。
東日本大震災を機に、東京・関東地区の学校を留学先に選ぶ留学生は大きく減少しており、この4月に日本語教育機関等への留学を申請した外国人の数は対前年同期比で2割、人数にして1800件ほどのマイナスとなった。一方、関西エリアは逆に同15%増えており、こうした層が来年度以降の大学等への「入学予備軍」となることから、次年度の留学生募集においても「西高東低」の傾向が続く公算が高い。
とはいえ、中国現地では「日本の原発を巡る報道はここのところ急激に少なくなっており、需要の戻りは比較的早い。状況がさらに落ち着いてくれば、もともと圧倒的に志願者の多い東京近辺の学校が盛り返してくるだろう(政府系留学仲介機関関係者)」との見方も出ており、今後の状況はさらに見極めが必要となりそうだ。